薬膳は予防医学であり、食養生の方法である中医学に基づいています。
西洋医学的には病気とは言えないような症状(未病の段階)で治す「未病先防」の考えがあります。
大自然の恵みすべてを「薬」としてとらえ、食材も、生薬も、自然由来のものはすべて薬膳の素材となります。
薬食同源・・・中国最古の医書『黄帝内経(素問)』には日々の食事(食養生)は薬の投与と源は同じであり、
穀畜菜果(一般の食物)をとることが健康保持の基本であるという記述があり、食の医療作用を解説しています。
“五穀為養、五果為助、五畜為益、五菜為充、気味合而服之、以補益精気”
五穀(麦、黍、稗、稲、豆);穀類は主な食材として五臓を養う。
五果(スモモ、杏、大棗、桃、栗);果物は五臓の働きを助ける。
五畜(鶏、羊、牛、犬(馬)、豚);肉類は五臓を補う。
五菜(葵、藿、薤、葱、韭);野菜により五臓を充実させる。
食材や中薬は効能別に約11種類に分けられ、効果効能別に分類されています。
解表類・清熱類・袪湿類・温裏類・理気類・理血類・消食類・化淡止咳平喘類・補益類・収渋類、
このように多くの食材を組合せ、バランスがよく、身体の精気を補うことが出来ると解釈し、
さらに食材によってそれぞれの臓腑に働くことも多く食体験をもって認められていました。
薬膳療法の基本
対象の療法の段階によって、食養、食療、薬膳の3つに大きくわけられます。
<食養法>
これは日ごろから自分の体質に合わせて食事のバランスをとることで、病気を予防するもの。
たとえば、冷え症の人が冷たい食べものを避け、なるべくあたたかくて、消化のよいものをとるといったことが、その例です。
<食療法>
俗に薬食同源(やくしょくどうげん)といわれるもので、食品のなかの薬的な効果を生かし、
食べもので体調の不良を治す方法です。
たとえば、生姜を発汗に使い悪寒をとったり、強い利尿作用をもつ小豆のゆで汁を、むくみの改善に利用したりするのは、
すべて食療の考えにもとづいた処方です。
<薬膳法>
食療にもとづいた料理に、さらに生薬を加えたもの。より強い効力をもち、食療では対処できない症状の場合に用いられます。
食養と食療は、私たちの日常生活にもっともかかわりが深く、健康維持と病気の治療に取り入れやすい薬膳療法です。
そして、具体的に食べものを健康のために用いる場合、たいせつになるのが五味(酸・苦・甘・辛・鹹(かん)という5つの味)と
五気(熱・温・平・涼・寒という食べもののもつ性質)の取り合わせです。
目的の効果を得るためには,五味五性をいかして食材を選ぶこと,さらに摂取する人の体の状態や体質、気候との適合を考慮することが重視します。
<薬膳メニュー開発>
日本の食材やハーブやスパイス・漢方生薬を使用し、和洋中華エスニックなどの調理法を基にした、無国籍な薬膳メニューを考案します。
1月 八宝がゆ
1月は1年でもっとも冷え込み、体力が低下しやすい時期。冷えをとり体力を回復し、衰えを防ぐために"腎"機能を整える(補腎)食養のメニュー。
2月 鶏の黒酢煮
厳寒の時期に元気がなくなり病気にかかりやすくなるのは、寒邪によるもの。寒邪を除き、血行をよくし(活血)、固くなった体をほぐす(補気)食養のメニュー。
3月 蟹とアロエのサラダ、ターメリックソース
3月は自然界の物象すべてが陰から陽に動き、体の気血も動きはじめる季節。冬に溜まった老廃物をデトックスし、体力を増す(補気・活血)ための食養メニュー。
4月 浅蜊と金針菜のココット
4月の活気にあふれる季節には、情緒を安定させて、血行をよくするために"肝"機能を安定させる(補肝)食養のメニュー。
5月 五仁の実のゼリー寄せ
気温の上がる5月は心身ともに負担がかかる時期。精神を安定させて、血液循環をよくするための"肝"や"脾"機能を養う(補肝・健脾)食養のメニュー。
6月 はと麦とぶくりょうのお粥、紅花のあん添え
梅雨入りに、冷え・消化不良・疲労・風邪などの症状が起こるのは、湿邪によるもの。体の湿邪を除き冷えを取り、体力を回復する(補気)食養のメニュー。
7月 トマトと冬瓜のレモングラス酸辛スープ
7月は高温多湿で体の陽気も上がり、湿邪をともなう熱邪により体力を消耗しやすい時期。 湿邪を除き体調を整え"脾"機能を健やかに(健脾)する食養のメニュー。
8月 モロヘイヤと蓮の実のスープ、陳皮の香り
陽が盛んな8月は、残暑とともに熱邪による疲れが残りやすい時期。"心"の気を整え津液(体の水分)を補い、体調を回復する(捕養心気・生津)食養のメニュー。
9月 真アジと白きくらげのマリネ、龍眼のドレッシング
9月は自然界の物象すべてが陽から陰に動きはじめる時期。空気の乾燥(温燥)より 呼吸器系の潤いを保ち、夏期の疲れをとる(潤肺・生津)食養のメニュー。
10月 百合根とぎんなんの豆乳スープ
10月は陰に傾き、気温が下がり乾燥が増す(涼燥)時期。 呼吸器系や肌に潤いを保ち(潤肺・生津)、冬に備えて元気な体を作る(補益)食養のメニュー。
11月 鴨と冬野菜のソテー、イチジクのソース添え
11月は寒さが増すことにより(寒邪)、体力と気力が低下しやすい時期。 体を温め、体力と免疫力がつき、気を補う(補益・滋陰)食養のメニュー。
12月 祝いの薬飯
12月の陰が最も強まる時期には、体の気を補う食材を取りバランスを保ち、"腎" 機能を整えて(補気・補腎)、春の健康体を作るための食養のメニュー。